制作事例

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 冊子
  4. ワークショップ用ツールあれこれ

ワークショップ用ツールあれこれ

ワークショップ用ツール制作

国立極地研究所様から、「新しい教育普及用ワークショップを立ち上げたい」という事でツール類一式を発注いただきました。

国立極地研究所とは・・・
地球の極地(南極・北極)の調査と研究、情報公開をしている日本の機関です。
映画「南極料理人」では南極観測隊に随行するコックさんを堺雅人さんが演じ、話題になりましたね。
観測隊はその名の通り極地の基地や船上で観測を行って、実地情報やサンプルを持ち帰る方たちです。

南極の海から持ち帰ったプランクトンで樹脂封入標本をつくって一般の方に観察をしてもらい、
地球環境への理解を深めてもらうワークショップで使用するツールを作りたい、とのご依頼がスタートでした。

東京の立川市にある極地研究所にはもともと南極・北極科学館が併設されていて教育普及と広報活動を担っているのですが、
コロナ禍の中、研究所を飛び出して遠隔・出張でも行えるワークショップを行いたかったそうです。

【オーダー1】
8種の標本を1セットとして標本セットにしたい

ワークショップのために8種類の異なるプランクトンが選ばれました。
樹脂のキューブの中にそれぞれユニークな生き物が封入されています。

標本といえば、一般的に液浸標本や乾燥標本、骨格標本が思い浮かぶと思います。理科室で見たことがある方も多いのでは。
樹脂封入標本は比較的新しい標本制作手法で、透明な樹脂に標本を封入してある標本です。
(私が学生だったおよそ20年前には理科室にはありませんでしたが、今はあったりするんでしょうか。)
・多少の手荒な扱いOK
・時間経過による封入物の破損や劣化がしにくい
・全面観察できる
…とメリットの多いものですが、制作に大変な手間と技術を要します。

南極の海からはるばるやってきた生き物を、クライアント様自らが一つ一つ樹脂に封入した貴重な標本…。
しかも封入物の特性上、傷がつきやすい柔らかめの樹脂を使用しているので、保護袋の検討から入りました。
やわらかな生地でやさしく包みこんで、出張にも耐えられるように保護します。
最初はメガネ拭きのような素材をご希望いただいていましたが、
後から追加された「観察マットとしての機能も持たせたい」とのご希望から
レガという高級人工スエードを選定しました。

A01とA13、黒と白の生地を縫い合わせて袋にし、標本を包みます。また、どちらの色の上でも標本を観察できるようになっています。

次に、保護袋ごと小さな紙箱に入れることにします。

マッチ箱スタイルで(スリーブ箱といいます)、1箱に1種類の標本、8種分の小箱。
こちらが出来上がったスリーブ箱です。

 

紙箱はいずれも「冷たく深い海の色」がご希望でしたので、カラーバリエーション豊かなタントの中から選択していただきました。
艶消し銀の箔が上品に輝いております。

個別に小箱を入れた理由は後ほど。

外箱は特に強度を重視したインロー式の紙箱です。
こちらが完成品です。色違いのスリットがおしゃれ。


スリーブ箱を8箱一組で外箱に入れて完成です。

ぴっちり収まった8箱のスリーブ箱を取り出しやすくするために敷紙を敷いています。
敷紙は蓮葉氷のデザインで、海面の蓮葉氷をめくると、その下からプランクトン達が現れるという趣向にしました。

蓮葉氷とは。
海の表面が凍り始めるとき、小さな氷がさざ波によってぶつかり合ってくっついて大きくなっていきます。
ぶつかったときに角が取れ、まさに睡蓮の葉のような形になるんです。
私は実物を見たことがないですが、資料の画像がとってもきれいでした。よろしければwebで画像検索を!

 

さて、個別のスリーブ箱にひとつずつ標本を入れたのは、グループワークで8種を分担して観察してもらうためです。
スリーブ箱ごと配れば傷つきやすい標本でも安心ですものね。

クライアント様の強いご希望から、どの小箱にどのプランクトンが入っているかわからないデザインにしてあります。
イラストや写真、名前などがないから何もわからない=生きものに対しての先入観を持たない をスタート地点として観察を始めてもらうための工夫です。
ワークショップは、まず標本の入ったスリーブ箱が配られ、参加者が自分の目で生物の体を観察し、スケッチを描き上げるところからスタートします。
完成したスケッチと別添えのブックレットを突き合わせ、ディスカッションをしながら名前や生態の答え合わせをしていくんです。
面白い進行ですね。
普段目にしたこともない生きものを、何の予備情報もなくスケッチする機会なんてそうそうありません・・・
なんだかワクワクしませんか!

【オーダー2】
ワークショップ用のブックレットを制作する
・可能な限りユニバーサルデザインを取り入れる
・可能な限り環境配慮型の製品となるようにする

別添えのA5サイズ20Pブックレットです。

標本セットの図鑑を含み、南極海の生態系の概要を学びながら極地研究所の活動を知ってもらう内容となっています。
図鑑に差し込んだプランクトンや生態系のイラストは、
クライアント様に資料をたくさんご用意いただき、修正を重ねながら描き下ろしました。

またなるべく見やすいレイアウトデザインと、UDフォントを用いています。
UDフォントとはユニバーサルデザインフォントの略で、誤読しにくいように気を配ってデザインされたフォントです。
身の回りのものでは家電のリモコンのボタンなどで採用されています。

また、今回の案件はSDGsに配慮する事でその付加価値を高めようとしており、可能な限りエコな素材を選び取ることを必要としていました。
環境配慮型の印刷物はいろいろな種類があるんですが、今回はFSC認証紙を使用することにしました。

FSC認証とは、「責任ある森林管理」を普及させるための国際制度です。
基準を満たしている木材加工品にはFSC認証マークをつけることができます。
箸袋やノートなど身の回りの物にもマークがついていることがあるので、見たことがあるかもしれません。

紙としては何の変哲もない「普通の紙」なんですが、FSC認証紙のマークをつけるには厳しい基準があります。
原料となる木材は専用に管理された森林のみから調達され、
製材→加工(今回は印刷)までの全工程で流通や消費量を厳密に管理されています。
むずかしいようですが、要はFSC認証マークの付いた製品を私たち消費者が選択することで、地球環境の保全を応援できる仕組みです。

上述の標本箱に用いたタントや当社の名刺に採用しているアラベールなど多くの銘柄紙が、
今後の生産分についてFSC認証紙への切り替えが予定されています。

 

【オーダー3】
ワークショップ進行に必要な関連ツールを制作する

他にもワークショップで使用するためのツールを作りました。

・ワークシート

・ディスカッションシート

・スケッチ用の付箋

・ペーパーファイル を制作しました。

いずれも機能性・筆記性・コストなどクライアント様と担当者のこだわりが詰まった製品となっています。

さて、ご相談いただいてから今回の一連のツールをお納めするまでにかかった期間はどれくらいだったでしょうか。

・・・実は、半年強ほどかかりました。

遠方のクライアント様であったこと、コロナ禍であったこともあり
クライアント様はもちろん、協力の印刷・パッケージ屋さん含め、一度も対面での打ち合わせをせずに進行しました。
お互いの持っているイメージや、実際の素材の質感・サイズ・色などを情報共有するのがなかなか難しく、仕様が決まるまでに最も時間を要しました。

web会議や電話、メールは便利です。
が、やはり自分の五感を使って得る情報には何物も代えがたいと再認識させられました。
早くコロナが収束してほしいと願うばかりです。

そういう面でも、普段目にすることのできない遠い海の生き物を手元で観察できるワークショップ、素晴らしいと思います。
是非体験してみたい!

ワークショップは、原則は教育関係団体様が主催いただくために貸し出し、または出張ワークショップの形式となります。
もしこのブログをお読みのあなたが教育関係者様でご興味があるようでしたら国立極地研究所様へお問い合わせください。
始めてご指導なさる方でも概要がこちらの動画でわかります。・・・というか今回の制作物が紹介されているので是非ご覧ください!笑

私としても多くの方に見知らぬの生き物との接点を持って頂けたらと思います。
大人気ワークショップとなりますように!

 

☆本記事には国立極地研究所様制作の動画から抜き出した画像を一部拝借しております。

 

関連記事

  • Facebook
  • Instagram
  • LINE

※LINEは準備中です

テイクアウト勝手に応援プロジェクト